個人の資産運用として、株式取引に注目が集まっています。株式市場の動向を示す「日経平均株価」などは、よくニュースで報道されますが、それが高騰傾向なのを見ていると「自分もそろそろ始めてみよう」と思う人も多いでしょう。
一方で、株は投資の基本であり、取引の歴史も長いものです。研究者も投資家も多く、そのため、経済学的な専門用語や、昔から言い慣わされてきた業界用語のようなものがたくさんあります。
そこで、初心者には、始め方がよく分からない面があります。とはいえ、基本的な用語について把握し、取引の始め方を理解すれば、後は「習うより慣れよ」で少しずつ株の世界が分かるものです。
株への投資は、個人の資産運用だけでなく、若くて新しい分野への投資と言う意味もあります。政府も「貯蓄から投資へ」と呼びかけています。
始め方さえ分かって株の世界に飛び込めば、社会や経済とのかかわりもより奥深くなるでしょう。

株の始め方その1:株取引の仕組みを学ぶ

国内の証券取引所 多くの株式は、証券取引所で売買されています。国内の証券取引所は東京、名古屋、福岡などにあります。
企業はこれらの取引所に登録してして株式を売買市場に出します(これを「上場」と言います)。
例えば「東証一部企業」といえば、東京証券取引所の1部に上場している会社です。日本を代表する名門企業であることが多いです。
東京証券取引所には、1部、2部だけでなく、新興企業を対象に取引するマザーズやジャスダックという市場もあります。
これら証券取引所で行われる売買に、一般の投資家が直接に参加することはできません。証券会社等の金融機関に仲介してもらうことになります。
株式投資を始めるには、まず証券会社等に口座を開いて入金する作業が必要です。また、売買に応じて仲介する証券会社に手数料を支払わなくてはなりません。
今では証券会社等とのやりとりはネットで行われることが主流となりました。
昔の店頭に出向いていた時代に比べると、口座の開設も楽になりましたし、売買手数料も安くなってきました。
手数料は、証券会社によって異なります。また、同じ証券会社でも、一回の取引ごとに手数料がかかるタイプもあれば、1日定額制のタイプもあります。
自分の取引スタイルに合った料金システムを選ぶことになります。
証券会社の口座には4通りあります。株式の売買の利益などは税金の対象となるので、納税の仕方によって分かれています。
「源泉徴収ありの特定口座」では1年間の売却損益を証券会社がしてくれて、税金は源泉徴収されます。
「源泉徴収なしの特定口座」では1年間の売却損益は証券会社がしてくれますが、納税は納税者自身で行います。
「一般口座」では計算も納税も個人が行います。「NISA口座」は一定額を一定期間非課税とする口座です。

証券会社における取引方法

証券会社で口座を開き、売買をする際、その注文方法には2つあります。「指値注文」と「成行注文」です。
「指値注文」とは、売買する株式数と価格を指定して注文する方法です。「A株式会社の株を800円の価格で100株買う」などと指定する方法です。
指定して注文した価格以上に有利な価格の場合のみ取引が成立します。希望する価格にならないと、取引自体が成立しない可能性があります。
「成行注文」とは、売買数は指定しますが、売買価格は指定しないで注文する方法です。「A株式会社の株をどんな価格でもいいから100株買う」というように注文します。
ほぼ確実に取引は成立しますが、価格変動が大きい時期に注文してしまうと思わぬ価格になってしまうかもしれません。一般には、売買価格をあらかじめ指定する指値注文の方が多いとされています。
証券取引所には、取引が行われる時間が決まっています。東証の場合は、平日(祝日以外の月曜から金曜日)の午前9時から11時30分の間と、午後12時30分から15時までの間の1日2回です。年末年始もお休みです。
注文自体は、証券会社が営業していればその時間に行うことができます。しかし、休日や夜間などになされた時間外の注文は、次に取引がある日に処理されることになっています。
証券取引所での取引は「オークション」方式と言います。3つの法則があります。
「成行注文優先の法則」では、指値注文と成行注文があれば成り行き注文の方が優先されます。
「価格優先の法則」とは、同一銘柄について複数の売り指値注文があればその中で最も低い価格が優先され、複数の買い指値注文があればその中で最も高い価格が優先されるというものです。
「時間優先の原則」は、同一銘柄の中で複数の注文があれば、時間の早いものが優先されます。
売買が成立しても、成立した日(約定日)が決済日ではありません。
約定日を含めて4営業日目に決済(受渡し)が行われます。
売買で値上がり益を出すだけでなく、配当金を受け取りたい場合などではこの日付が権利日として重要となります。

株の始め方その2:投資の基本用語を学ぶ

投資の用語辞典 株価の値動きは、経済や景気によって左右されます。経済統計の中でも「GDP(国内総生産)」「鉱工業生産指数」「機械受注統計」「消費者物価指数」などの経済指標が証券取引市場に大きく影響を与えます。
また、経済のグローバル化で、日本の市場にどれだけ海外の投資家が参加するかも取引市場の値動きに大きな影響を与えます。
海外の経済指標についても情報を把握することで、国内の相場の動向が分かりやすくなります。
投資の基本用語に、市場傾向をあらわす指数があります。「日経平均株価」「東証株価指数(TOPIX)」「JPX日経インデックス400(JPX日経400)」などがあります。
「日経平均株価」は、よくニュースで報道されるものです。これは、東証1部に上場されている上場企業の株価のうち、代表的な225銘柄のものを平均したものです。
この225銘柄は定期的に入れ替えられます。この日経平均株価は、平均して算出するものですので、価格の高い銘柄(値嵩株)の変動に影響を受けやすい面があります。
「東証株価指数(TOPIX)」は、東証1部に上場されている全銘柄の時価総額を指数化したものです。時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすいという性質があります。
「JPX日経インデックス400」は、東証全体、すなわち、東証1部だけでなく、2部、マザーズ、ジャスダックも対象とします。
その中から「資本を効率的に活用している」とか「投資家にとって魅力的である」とかといった特徴のある企業を400社選んで構成される指標です。
個別の株式について、評価する指標もあります。格安かどうかを示す「PER」と「PBR」。出資者からの資金を上手に使っているかを見る「ROE」などです。

「PER」はよく使う用語です

「PER」とは、「株価収益率」のことで、株価が1株当たりの純利益の何倍になっているかを示します。同業他社や海外市場と比べることで、その株価が割安なのかどうかが分かります。
例えば、同じ業種でPERが10倍のA社と15倍のB社では、A社の方が割安です。また、海外の市場の平均のPERが15倍であるのに対して、日本の市場の平均のPERが10倍であれば、日本の株式は世界的にみて割安と判断されます。
PBRは、「株価純資産倍率」のことで、株価が一株当たりの純資産の何倍になっているかを見る指標です。純資産の何倍まで買われているか、を示します。
会社の純資産は、万が一、会社を解散する時に出資者の取り分となる財産であり、解散価値とも呼ばれます。ですから、PBRが1であれば、投資した額と、取り戻せる額とが同じであることになります。
PBRが低く1倍に近い銘柄は割安、それ以上であれば割高だとされます。ROEは、「自己資本利益率」のことで、企業が出資者のお金(自己資本=純資産)を使って、どれだけ利益を上げたかを見る指標です。
当期純利益÷自己資本(純資産)×100で計算されます。欧米の企業に比べると、日本の会社は出資者への配慮があまりなく、お金を内部に貯めこんで上手く使って利益を生むのが苦手だと言われてきました。
今でも、欧米の企業よりROEが低い傾向はありますが、JPX日経インデックスが400社を選定するにあたってROEを基準の一つにするなど、日本社会にも浸透しつつある概念です。
配当について直接示してくれるのが、配当利回りと配当性向です。配当利回りは、投資額に対する配当金の割合を示します。株価が800円で年間配当金が20円なら2.5%です。
配当性向は、その企業が稼いだ利益のうちどれだけ出資者に還元したかを表します。配当金総額(企業がすべての投資家へ払った配当金の総額)÷当期純利益×100で計算されます。
「PER」「PBR」などの指標を基に、その企業の基本的な情報を収集して分析することをファンダメンタルズ分析と言います。多くは購入する場面で用いられます。
ネットなどで株価を調べてみると、値動きが折れ線グラフで表示されます。これをチャート図といいます。
このチャート図を見て売買のタイミングを決めることをテクニカル分析と言います。

株の始め方その3:株価が安いものから少額で始める

株式は、企業が資金調達のために発行する証券です。資金を出して、その見返りに配当などの権利を取得しますが、資金そのものはその時点で企業のもので、当然に返ってくるものではありません。
それは、既に発行された株式を購入して株主になった場合でも同じです。預貯金のように元本が保証されているものではありません。
投資した先の企業の業績が上手く伸びないと株式の価値は下がります。名門の大企業でも不祥事を起こすなどすれば大幅に株価が下がります。
制度上、株価が以上に急騰したり暴落したりすることを防止するために、1日の値幅を制限する制度(値幅制限)はありますが、株式への投資は本質的にはリスクを伴うものです。
そのため、初心者は価格の安いものから少しずつ投資額を上げていきながら、徐々に株の世界に慣れるのが良いでしょう。株価を一覧的に比較するには、新聞の株価欄を見る方法があります。
また、証券会社のサイトで、希望の条件でスクリーニングすることもできます。
「安い」と思った企業の中から、その企業の「PER」「PBR」などの情報を集めてファンダメンタルズ分析を行い、「安かろう悪かろう」というようなものを省き、購入します。
また、最初のうちは、手数料分の利益さえ出た時点で、早めに利益を確定させるよう売却することも良いでしょう。ネットで売買するにも、1度や2度でそのシステムに慣れるわけではありません。
小さな金額で売買をするという作業に慣れていく時間も必要です。ただ、私たちが日常生活で株価として目にする価格が購買価格ではないことには注意が必要です。
実際に取引をするには、最低の株式数が決まっています。これを単元株と言います。単元株式数(1単元の株式数)は企業によって異なります。
東京証券取引所の1単元は、平成26年から100、または1000株に統一されており、約7割が100株となっています。
購入する際には、最低でも「その企業の株価×その企業の単元株数」の資金を用意しなくてはなりません。
株価800円で、単元株式数が100株の株を購入する場合は、800円×100=80,000円が必要となります。

1単元未満で売買出来る株もあります

単元未満でも売買されるものもあります。「株式ミニ投資」と「株式累積投資(るいとう)」と呼ばれるものです。
「株式ミニ投資は」は1単元の10分の1単位で売買する方法です。売買単位数の10分の1の整数倍で10分の9まで売買が可能です。
取引単位が1の銘柄には利用できません。また、価格は翌営業日の始値(最初の値段)と決まっているため、指値注文は出せません。
証券会社に、ミニ投資約款に基づくミニ投資口座を開設することが必要です。ミニ投資ができる銘柄は決まっていますので、あらかじめ調べておく必要があります。
「株式累積投資(るいとう)」は、毎月一定額ずつ積み立て方式で購入するものです。こちらも対象となる銘柄は限られています。そして、指値注文は出せないという制約があります。
このように、毎月一定額ずつ投資する方法を、「ドル・コスト平均法」と言います。リスクを分散するのに優れた方法だとされています。
「ドル・コスト平均法」では、一定額ずつ購入するので、価格が高いときには少しの数を、価格が低いときには多くの数を買うことになります。長期的には平均価格が低くなる効果があるとされています。
ただ、価格が上昇傾向にあると、ドル・コスト平均法は不利になることもあります。横ばいや下落相場に強みを発揮する購入方法です。
「るいとう」は少しずつ株式を積立購入するものです。単元株に達するまでは、名義人は取扱証券会社の株式累積投資口名義です。
配当金等は持分に応じて配分されますが、その他の議決権などの株主としての権利はありません。単元株数に達したときには単元株として扱われるようになります。
これらの他に、ネット証券の中には、わずか1株から購入できる「単元未満株」という証券会社独自のサービスを提供しているところがあります。
手数料は高くなりますが、日本を代表するような超有名大企業でも、ごく少額から購入することができるので安心してスタートすることができるでしょう。